Column
ヘルスケアに関するコラム
2025年10月3日
ホルター心電図でわかること完全ガイド|受けるべき人・検査の流れ・注意点
ホルター心電図は長時間にわたり心電図を連続記録し、安静時検査では捉えにくい発作的な不整脈や、日常生活に伴う心筋虚血の兆候(ST変化)を高感度に検出します。
通勤・仕事・睡眠など“いつもの生活”の中で心電図を記録し、症状(動悸・胸痛・めまい等)と記録時刻を突き合わせることで、原因の見極めに役立ちます。
本記事では、ホルター心電図でわかること・受けるべきタイミング・結果の見方・注意点をわかりやすく解説。
最後に当社の使い切りパッチ型ホルター心電計「eclat(エクラ)」(医療機関向け)の概要もご紹介します。
ホルター心電図で「わかること」(5項目)
以下5項目について、検査で何が分かりどう活用するかを整理して解説します。
1、一過性の不整脈
・心房細動/粗動の発作の有無・負荷(総時間/割合)
・上室性/心室性期外収縮(PAC/PVC)の総数・連発・R on T
・発作性上室頻拍(PSVT)、洞停止・房室ブロック等の徐脈性不整脈
・危険な心室性不整脈の早期察知
2、虚血のサイン(STトレンド)
・労作・ストレス・夜間に伴うST低下/上昇のパターン
・症状(胸痛・息切れ)との時刻一致を重症度評価の参考に
3、24時間の心拍変動(HRV含む)
・平均/最小/最大心拍、夜間徐脈
・心拍変動(HRV)の傾向から自律神経バランスの参考情報
4、症状との相関
・「症状ボタン」「行動日誌」と時刻で突き合わせ、因果を推定する
5、治療・デバイスの評価
・抗不整脈薬・β遮断薬の効果把握
・アブレーション後の再発確認、ペースメーカーの効果把握
ホルター心電図とは?安静時心電図との違い
ホルター心電図は、胸に小型の記録器を装着して24時間以上連続で心電図をとる検査です。通勤・仕事・睡眠など日常生活の中で実際に起きる心臓の変化を捉えます。
一方の安静時心電図は、ベッド上などで数十秒〜数分だけ記録する基本検査です。
1、ホルター心電図と安静時心電図の違い
【ホルター心電図】
・装着した電極(またはパッチ型)から長時間連続で波形を記録。
・発作的に起こる不整脈や、生活場面に伴う心筋虚血の手がかり(ST変化)、症状と心電図の時刻一致を評価できます。
・「夜だけドキドキする」「通勤中だけ胸が苦しい」など、タイミング依存の異常把握に強い。
【安静時心電図】
・短時間で心拍のリズムや伝導、過去の梗塞の痕跡などの基礎情報を確認。
・その場で異常が出なければ、一過性の発作は見逃しやすい。
2、役割の違い(早見表)
項目 | 安静時心電図(12誘導) | ホルター心電図(24時間以上) |
記録時間 | 数十秒〜数分 | 24–48時間(機器により7日以上も) |
記録環境 | ベッド上・安静 | 日常生活(通勤・運動・睡眠を含む) |
得意分野 | 基本リズム・伝導障害、既往梗塞の痕跡、明らかな虚血所見 | 発作性不整脈の検出、STトレンド、症状との相関 |
見逃しやすいもの | 一過性イベント | —(長時間で捕捉しやすい) |
向いているケース | 健診・初診の基本評価、緊急時スクリーニング | 「たまに出る」動悸/胸痛/めまい、夜間や運動時に出る症状の精査 |
どんなときに受けるべき?受診の目安
「たまにドキッとする」「夜だけ胸が苦しい」――その“たまに”こそホルターの出番です。症状や状況別に、その目安をまとめます。
症状が断続的
動悸、胸の違和感、脈が飛ぶ・乱れる、めまい、ふらつき、失神前兆
疾患・目的
心房細動スクリーニング、狭心症疑い、心不全のリズム評価、薬効・デバイス評価、アブレーション後フォロー
ライフステージ
アスリート(運動時の不整脈)、高齢者(夜間徐脈・徐脈性発作)、小児(症状の言語化が難しい場合は保護者の観察と併用)
検査の流れ|予約〜装着〜返却〜解析〜説明
1、予約・説明:服薬状況・持病・金属アレルギー等を確認
2、装着(10〜20分程度):電極貼付・記録器を装着。装着中の注意を説明
3、日常生活:普段どおりに生活。症状があればボタンを押す/日誌に記録
4、返却:翌日以降に機器を返却(宅配 or 医療機関)
5、解析・医師説明:イベント抽出→医師読影→結果説明と次の方針
結果の見方|レポート読み解きのポイント
基本指標:最小/最大/平均心拍、日内心拍トレンド
→ 1日のうち心臓が「どれくらい速く・遅く」打っていたかの全体像です。仕事中は速い、睡眠中は遅いなど、生活リズムと合っていれば多くは自然な変化です。
イベント:AF負荷(時間/割合)、PAC/PVC総数・連発、停止/ブロックの発生
→ AF=心房細動が「どのくらいの時間」続いたか。PAC/PVC=期外収縮(脈が“飛ぶ”感じ)の回数や連続の有無。停止=一瞬脈が止まる/ブロック=電気の伝わりにくさ。症状(動悸・ふらつき等)と発生時刻が重なるかが手がかりです。
STトレンド:低下/上昇の出現タイミング・持続・症状との相関
→ STは心電図の“線の一部”。ここが下がる/上がる変化は「心筋の酸素不足のサイン」を示すことがあります。いつ(運動・ストレス・夜間)出たか、胸痛などの症状と同時かを確認します(=確定診断ではなく“要注意の合図”)。
次の一手:運動負荷試験、心エコー、長期イベントレコーダー、治療提案(薬、アブレーション等)
→ 必要に応じて、①運動負荷:動いた時の変化を見る、②心エコー:心臓の動き・形を見る、③長期レコーダー:まれな発作を長期間で拾う、④治療:薬やカテーテル治療など—へ進みます。医師と「症状が出る場面」を共有すると方針が決めやすくなります。
費用と保険適用の目安
・保険適用の有無は症状・医師判断・施設基準等で異なります
・自己負担の目安は医療機関/実施方法で幅があります(外来/在宅、解析含むか 等)
※正確な金額は受診先でご確認ください
装着中の注意点とトラブル対処
入浴:機器の種類により可否が異なる(シャワー可/不可)。事前に要確認
運動:強い発汗・接触で電極が剥がれないよう工夫(テープ追加/衣服の擦れ対策)
就寝:ケーブルを引っ張らない姿勢、寝具との摩擦を減らす
皮膚トラブル:かゆみ/発赤→無理せず医療機関に相談、貼り替え指示に従う
データ欠損防止:機器を濡らさない、勝手に停止・充電切れに注意、症状時刻を記録
他の検査との比較|携帯型心電図・イベントレコーダー・スマートウォッチ
項目 | ホルター心電図 | イベントレコーダー(長期) | スマートウォッチ等 |
記録期間 | 24–48時間中心 | 数週間〜数カ月 | 常時(製品依存) |
発作捕捉力 | 日常で高い(短期密度) | 稀発作に強い(長期) | 発作時に手動記録が必要な場合あり |
精度/解析 | 医療用規格+医師読影 | 医療用規格+医師読影 | 製品・アプリ依存(医療機器でない場合あり) |
症状相関 | ◎(症状ボタン/日誌) | ○ | △ |
費用/入手性 | 医療機関/在宅サービス | 医療機関 | 市販品・医療機器あり |
当社の医療機関向けパッチ型ホルター心電計「eclat(エクラ)」のご紹介
eclat(エクラ)は、医療機関での不整脈評価をサポートする使い切りパッチ型のホルター心電計です。最大7日間の連続記録に対応し、日常生活中に起こる発作性の不整脈などをより捉えやすくします。記録データは循環器内科医師と臨床検査技師が解析し、医療機関を通じて結果が活用されます。※本サービスは医療従事者向けです。一般の方が直接お申し込みいただくものではありません。
こんな場面で活用
24時間検査では捉えにくい発作の評価/外来の待機時間や機器台数の制約を軽減したい医療機関の運用支援。
ご利用の流れ
医療機関からの案内に従って装着・記録し、解析は専門スタッフと医師が実施します。結果は医療機関から説明されます。
詳しくはこちら(医療従事者向けサイト)
→https://kokoromil.com/eclat/
個人の方向けのデバイスとサービスとして、自宅で不整脈や睡眠時無呼吸症候群、ストレスの兆候をチェックできる「ホーム心臓ドック®」も提供しています。ニーズに応じて医療機関や当社サービスをご検討ください。
ホーム心臓ドック®について詳しくはこちら
→https://homeheart.health/products/homeheart-pro01
よくある質問(FAQ)
Q1. ホルター心電図でわかる病気は?
主に不整脈(心房細動・心房粗動・発作性上室頻拍・期外収縮・房室ブロック・一過性の心停止など)と、**狭心症・心筋虚血を示唆する変化(ST低下/上昇のトレンド)が分かります。加えて日内の心拍変動(HRV)**や、症状(動悸・胸痛・めまい・失神)と心電図所見の時間一致も評価できます。
Q2. 24時間心電図でわかる病気は?
内容はQ1と同様ですが、24時間という連続記録により、夜間・早朝にのみ起きる発作や、仕事/運動/ストレスなど生活行動に紐づく異常を捉えやすい点が特徴です。短時間検査で出なかった不整脈・虚血の発見に向いています。
Q3. ホルター心電図検査では何を見るのでしょうか?
次のような項目を総合的に見ます。
リズム評価:不整脈の種類・頻度・発生タイミング、最長停止、ブロックの程度
心拍数の推移:最小/最大/平均、活動・睡眠での変化
虚血所見:STトレンド(低下/上昇)の回数・持続・出現状況
症状相関:症状ボタン/日誌の時刻一致
治療・デバイス評価:薬の効果、アブレーション後、ペースメーカー作動状況 など
Q4. ホルター心電図はどのような人に適用されますか?
代表例は以下です。
症状が断続的:動悸、脈の乱れ、胸痛、めまい、ふらつき、失神前兆
疾患評価:心房細動スクリーニング、狭心症疑い、心不全のリズム管理
治療・手技後フォロー:薬効評価、アブレーション/ペースメーカー後の確認
特定シーン:運動時症状のあるアスリート、夜間の症状が多い高齢者、小児(保護者の観察と併用)
Q5. 24時間ホルターでわかることは?
指標一覧の一例
心拍:最小/最大/平均、総心拍数、日内変動
不整脈:PAC/PVCの総数・連発、心房細動/粗動の負荷(時間・割合)、上室/心室頻拍、最長ポーズ、房室ブロック
虚血:ST低下/上昇の回数と持続、出現状況(運動・ストレス・睡眠など)
HRV:自律神経バランスの参考指標
症状相関:症状記録との時間一致の有無
Q6. ホルター心電図で不整脈が出ないのはなぜですか?
稀発作だと24時間の記録ウインドウに出現しないことがあります。次の一手として、
記録延長:数日〜数週間のイベントレコーダー/パッチ型
トリガー活用:症状時に自分で記録ボタンを押す方式
追加検査:運動負荷試験、心エコー、血液検査
などを検討します。
Q7. 心電図で引っかかる病気は?
不整脈(期外収縮・頻脈・徐脈・房室ブロック・心房細動など)、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞の疑い)、心肥大・心筋症、伝導障害、電解質異常や薬剤の影響などです。
健診の安静時心電図で異常を指摘されたら、必要に応じてホルター心電図・心エコー・負荷試験などの精査へ進みます。
Q8. 24時間心電図の結果はいつわかる?
一般的な目安は当日〜2週間程度
院内解析:数日以内の説明が多い
外部委託/混雑期:1週間前後
在宅実施(ホーム心臓ドック®):返送日数が加わる
長時間記録・イベント多発・再解析:延びることあり
強い胸痛・息切れ・意識障害など緊急症状がある場合は、結果を待たず直ちに受診してください。
ココロミル(ホーム心臓ドック®・eclat)では、返送到着から平均3営業日でレポート返却をしております。緊急所見が疑われる場合は先行連絡の運用もあります。
Q9. ホルター心電図装着中に入浴はできますか?
機器の種類で異なります。シャワー可/不可の指示に従ってください。
Q10. 仕事や運動は可能?
多くは可能ですが、強い発汗・接触で電極が剥がれないよう配慮を。
Q11. 皮膚がかぶれやすいのですが…
事前に相談を。低刺激パッドや貼付部位の調整で対応できる場合があります。
Q12. 結果が“異常なし”でも受ける意味はありますか?
症状が心臓由来ではない安心材料になります。経過観察の基準にも。
Q13. 在宅での検査は精度的に大丈夫?
医療用機器・医師読影・適切な装着が担保されれば医療機関と同等の質が期待できます。