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ヘルスケアに関するコラム
2025年11月26日
痩せすぎは突然死の原因に?「細すぎる体」が心筋梗塞や心不全など心臓リスクに繋がる理由を徹底解説

監修:循環器専門医師 磯谷善隆先生
「急に痩せてきたけど、健康面が心配」
「ダイエットしたけどこの体重だと危ないのかな」
太りすぎがよくないことはよく聞くけど、痩せすぎはどうなんだろう?
結論から言うと、痩せすぎは見た目よりもずっと「心臓」にとって危険です。
日本人のデータでは、BMI19未満の人は、心筋梗塞などを起こしたとき、1時間以内に突然死する確率が、BMI23〜25未満の人の約2倍になると報告されています。
この記事では、
・どこからが危険な「痩せすぎ」なのか
・なぜ痩せすぎで突然死や心不全が増えるのか
・心臓を守るために、今日から何を変えればいいのか
できるだけわかりやすくお伝えします。
どこからが「痩せすぎ」?BMIの基準と寿命・突然死リスク
痩せすぎの目安は「BMI18.5未満」
まずは、ご自身のBMIをチェックしてみましょう。
■ BMIとは?
Body Mass Index(ボディ・マス・インデックス)の略で、
「身長に対して体重がどれくらいか」を見るための数字です。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)²
一般的な基準は次の通りです。
- 18.5未満:痩せすぎ
- 18.5〜24.9:普通体重
- 25以上:太りぎみ〜肥満
さらに、BMI17.5以下は、後述する「神経性やせ症(摂食障害)」の診断基準の一つにもなります。
「ちょいぽっちゃり」が一番長生きという現実
日本の大規模研究では、
- もっとも寿命が長いBMIは「23〜25」あたり
- 18.5未満の人は、普通体重の人に比べて死亡率が約2倍
という、U字カーブの結果が示されています。
デンマークなどの先進国の最新データでは、
- 最も死亡率が低いBMIは 27前後(一般的には“過体重”とされる範囲)
という結果も出ており、「少し重いくらい」のほうがトータルでは長生きしやすい、という流れになっています。
痩せすぎと突然死:BMI19未満でリスク2倍
とくに心臓に関しては、さらにショッキングなデータがあります。
男女とも、BMI19未満の人は、心筋梗塞などを起こしてから1時間以内に突然死する確率が、BMI23〜25未満の人より約2倍高い
これは、単に「細いと体力がない」というレベルではなく、命に直結する差です。
(※心筋梗塞…心臓に行く血管がつまって、心臓の筋肉が「酸欠で死んでしまう」病気)
痩せすぎで心臓に何が起こる?心筋梗塞・不整脈・突然死のメカニズム
脳や心臓などの重要臓器は、最低限のエネルギーを優先的に使いますが、極端な痩せでは、その「最低限」すら削られていきます。
エネルギー不足で「心筋」そのものが弱る
痩せすぎ=体全体のエネルギー不足です。
心臓の筋肉(心筋)が痩せると、
- 一回の拍動で送り出せる血液量が減る
- 少しの運動やストレスでも心拍数が上がりやすくなる
- 心拍のリズムが乱れやすくなる(不整脈)
といった変化が起こり、突然の心停止や致死的不整脈のリスクが上がります。
不整脈とは、 本来「一定のリズム」で打つはずの心臓の鼓動が、
- 速くなりすぎる
- 遅くなりすぎる
- リズムがバラバラになる
といった電気のリズムの乱れが起きている状態のことです。
軽い不整脈は、自覚症状がほとんどないことも多く、一方で、
- 動悸(ドキドキする)
- 息切れ
- めまい
- ふらつき
などの症状の原因になることもあります。
ただ、不整脈 = 心臓の電気のリズムが乱れている状態の総称 であって、必ずしも全部が危険というわけではありません。
その中で発症する命に関わる「致死的不整脈」
不整脈の中でも、特に危険なのが致死的不整脈です。そのまま放っておくと、心臓が止まり、数分で命にかかわるタイプの不整脈を指します。
心臓が、
- ぶるぶる震えるだけで血液をほとんど送れなくなる(心室細動)
- 速すぎてポンプとして機能しなくなる(無脈性心室頻拍 など)
状態になり、意識消失 → 突然死につながる危険な症状です。
この場合は、
- 即座の胸骨圧迫(心臓マッサージ)
- AEDによる電気ショック
といった緊急対応がないと助からないレベルの不整脈という意味で「致死的」と呼ばれます。痩せすぎの方はこのリスクが上がります。
痩せすぎによる電解質異常・ホルモン異常 → 不整脈から突然死へ
痩せすぎ、とくに摂食障害が絡む痩せでは、
- カリウム・ナトリウムなど電解質のバランスが崩れる
- ホルモンバランスの乱れで自律神経が不安定になる
といった変化が起こります。
これは、心臓にとってはかなり危険な状態で、
- 心臓のリズムを司る電気信号が乱される
→ 致死性の不整脈(心室細動など) - 心筋梗塞などの急性心血管イベントが起きたときに
→ 発症から短時間で心停止に至りやすい
と、「痩せている人ほど、発作が起きたときの踏ん張りが効かない」状況になります。
痩せすぎによる認知機能・認知症リスクも「心臓リスク」に
また、痩せすぎで筋肉量が減ると、
- 脳への血流が低下しやすい
- 筋肉から分泌される「脳を守る物質(マイオカイン)」が減る
ことが分かってきています。
このため、痩せすぎの人ほど認知症リスクが上がる可能性が指摘されています。
心臓・血管の病気と認知症は、もともと密接な関係があります。
「心臓に悪い状態」=「脳にも悪い状態」と考えてOKなのです。
痩せすぎ+筋肉不足(サルコペニア)が心臓と脳を追い込む
筋肉は「第二の心臓」〜ふくらはぎが細い人は要注意
骨格筋、とくに ふくらはぎは「第二の心臓」 とも呼ばれます。
- 歩く・立つ・階段を上る
→ 筋肉がギュッと縮むたびに、血液を心臓に押し戻す「ポンプ」の役割 - 筋肉がしっかりある
→ 心臓一つにかかる負担が軽くなる
逆に、
- 太もも・ふくらはぎが細すぎる
- すぐに座りたくなる、あまり歩かない
といった状態では、全身の血液循環をほぼ「心臓ひとり」が頑張っている状態になります。
サルコペニア=筋肉減少が心不全を悪化させる
加齢や痩せすぎで、
- 筋肉量が減る
- 握力や歩行速度が落ちる
といった状態をサルコペニア(筋肉減少症)と呼びます。
サルコペニアがあると、
- 転倒や骨折が増える
- 活動量がさらに減り、心肺機能も低下
- 心不全が悪化しやすく、入退院を繰り返しやすい
という、心臓にとってかなり厳しいコンボになります。
筋肉は「心臓と脳の味方」〜認知症リスクともつながる
筋肉は、動くたびに
- 脳の活動を助ける物質(マイオカイン)
- 代謝や免疫を調整する物質
などを分泌しています。
痩せすぎで筋肉が落ちてしまうと、
- 心臓の負担アップ
- 血流低下による脳へのダメージ
- 認知症のリスク増加
と、心臓と脳の両方にマイナスが重なっていきます。
つまり、「細いうえに筋肉も少ない」状態は、見た目がスリムなだけで、中身はかなりハイリスクということです。見た目の細さよりもまず“筋肉不足”を疑って、歩く・軽い筋トレ・たんぱく質をとるといった対策を意識していきましょう。
若い女性に広がる「危険な痩せ」と将来の心臓リスク
20〜30代女性は「太りすぎ」より「痩せすぎ」が多い
日本では、20〜30代女性で、痩せすぎ(BMI18.5未満)の割合が、太りすぎ(BMI25以上)の割合を上回っています。
普通体型でも「自分は太っている」と感じ、ダイエットを繰り返す人が多いというデータが出ており、日本の若い女性は「世界で一番ダイエットしている国民」と表現されることもあります。
シンデレラ体重・モデル体重=「寿命を削る体重」
SNSや雑誌でよく見る、「シンデレラ体重」「モデル体重」などは、多くの場合、BMIが20前後、あるいはそれ以下になります。
一方で、研究が示す「もっとも長生きしやすいBMI」は、23〜25前後。
つまり、「美容のゴール」と「寿命のゴール」がズレているのです。
20代の突然死についてはこちらの記事もご覧ください。
20代で突然死する人の共通点と2025年最新予防策!命を脅かす睡眠・ストレス・心疾患の危険度チェックも
妊娠・赤ちゃん・次世代への影響:痩せすぎは「子どもの心臓」も追い込む
痩せすぎは、自分だけでなく次の世代にも影響します。
低出生体重児と将来の生活習慣病
痩せすぎの妊婦さんは、出生時体重が2500g未満の低出生体重児を産みやすいことが分かっています。
低出生体重児で生まれた子どもは、成長してから
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 心筋梗塞などの心血管病
になりやすいことが、Barker仮説/DOHaD学説として知られています。
お腹の中で「飢餓モード」に適応した体が、生まれた後の「飽食環境」に放り込まれることで、かえって肥満やメタボになりやすい —— という皮肉なメカニズムです。
「自分の美容のための痩せ」が、子どもの心臓リスクを上げる
日本では、社会の豊かさが増したのに、低出生体重児の割合が再び増加・高止まりしており、その要因の一つとして妊婦のエネルギー摂取不足(=痩せすぎ志向)が指摘されています。
つまり、「自分の見た目のためのダイエット」が、「将来の子どもの心臓病リスク」を上げてしまうという、つらい現実があるのです。
実は「太っている人」より危険?肥満パラドックスと痩せすぎの心臓
ここでよく聞かれるのが、「太ってる人のほうが危ないんじゃないの?」という疑問です。
もちろん、太りすぎは動脈硬化や高血圧、糖尿病のリスクを上げます。しかし、すでに心不全や心臓病を持っている人だけに絞ってみると、状況が逆転します。
心臓病を持つ人では「痩せているほど予後が悪い」
心不全や心筋梗塞の患者さんを追跡した研究では、
- 痩せている患者ほど、その後の生存率が低い
- 逆に、やや太っている人のほうが長く生きる
という現象が複数の国で報告されており、これは「肥満パラドックス」と呼ばれています。
理由の一つはシンプルです。病気が長引く → 食欲が落ちる → 筋肉も脂肪も落ちる → さらに疲れやすくなるという悪循環で、重症化するほど「太りたくても太れない」状態になっていくからです。
緊急手術や急変時に「痩せている人ほど持たない」
命がかかった場面では、
- ストレスで交感神経がフル稼働
- 炎症性物質(サイトカイン)が全身の細胞を攻撃
- 大量のエネルギーが一気に必要
という「カラダの総力戦」になります。
このとき、体にしっかり「蓄え(脂肪と筋肉)」がある人のほうが生き残りやすいことが報告されています。痩せすぎの体は、「燃料タンクがほとんど空の状態で、フルアクセルを踏まされる車」のようなものです。
こんな痩せ方は危険サイン?チェックリスト
次のような状態に複数当てはまる場合は、「ただの体質」ではなく、体と心が悲鳴を上げているサインかもしれません。
- BMIが18.5未満、あるいは19未満が続いている
- 半年〜1年の間に体重が5%以上減った
- 立ちくらみ・動悸・息切れが増えた
- すぐ疲れる、階段がつらい
- 生理が止まった/不順になった(女性)
- 「食べたもの」「カロリー」のことを常に考えてしまう
- 体重計の数字で一喜一憂してしまう
- 自分では「痩せている」と思わないが、周りに「細すぎる」と言われる
- 過食→嘔吐や下剤・利尿薬に頼ることがある
ひとつでも気になる項目があれば、早めに内科・循環器内科、場合によっては心療内科・精神科に相談することをおすすめします。
突然死を防ぐために:今日からできる3つのステップ
最後に、大切な心臓を守るためにできる具体的なステップをまとめます。
① 「少し太め」くらいを許す——目標は「心臓が安心する体重」
体重の目標は「シンデレラ体重」ではなく、BMI22〜24前後を一つの目安にしましょう。
いきなりそこまで増やす必要はありませんが、「これ以上は落とさない」「ほんの少しずつ増やす」方向に舵を切ることが大切です。
② 筋トレ+バランスの良い食事で「心臓を支える筋肉」を取り戻す
痩せすぎからの回復では、以下も意識しましょう。
- ただ食べて太るだけ → 内臓脂肪ばかり増えてしまう
- 筋肉を増やしながら体重を増やす → 心臓にも優しい
この違いは健康にとって大切です。
おすすめは、以下です。
- 週2〜3回の軽めの筋力トレーニング(スクワット・かかと上げなど自重トレーニング)
- 毎日20〜30分程度のウォーキング
- タンパク質を意識した食事(肉・魚・卵・豆製品・乳製品)
ただし、腎臓病など持病がある場合は、必ず主治医と相談してください。
③ 心臓の状態を「見える化」する
痩せすぎの人は、
- 心電図
- 心エコー
- 必要に応じてホルター心電図(24時間心電図)
などで、一度、心臓の状態をきちんと確認しておくことをおすすめします。心臓リスクは、癌などとは違い、発症=即命にかかわる危険なものもあります。
今は病院の検査のほか、自宅で心臓の状態をチェックできるサービス(例:株式会社ココロミルが提供するホーム心臓ドック®など)もあります。それらを上手に活用するのも一つの方法です。
ホーム心臓ドック®は、心臓由来の突然死の原因にもなりうる「不整脈の兆候」を自宅でチェックできる検査サービスです。
胸に小型の心電図を貼って、日常生活を9時間ほど過ごすだけで検査は完了します。健康診断の30秒ほどの検査では捉えにくい“隠れた突然死リスク”の兆候を捉えることができます。検査の精度は健康診断が10%に対し、ホーム心臓ドック®では36%です。※
また、突然死の引き金となる睡眠・ストレスの状態も一度で測定できます。
病院でしっかり検査するほどではないけど、自分の心臓や健康の状態を一度はチェックしておきたい- そんな方はぜひ自宅での検査を取り入れてみましょう。
※ホーム心臓ドックで要経過観察又は要受診が出た方の割合
「細い=キレイ」より「生き残れる体」を選ぶ
痩せすぎ(特にBMI18.5未満・19未満)は、突然死・心不全・認知症などのリスクを上げます。
「細いね」と言われるために体重を削るのか、「長く元気に生きる」ために心臓を守るのか。どちらを選ぶかで、10年後・20年後のあなたの心臓も、そばにいる大切な人の時間も変わります。
ぜひ今日からは生き残るため・大切な人と笑って過ごすための体づくりを選んでください。そのために私たちは、ホーム心臓ドック®やeclatを通じて、あなたの心臓の今と未来を見守っていきます。

監修医師・執筆体制
監修:循環器専門医師 磯谷善隆先生
免責:本記事は一般的な医療情報をわかりやすく説明したもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある方、検査結果が気になる方は必ず医療機関でご相談ください。

