Column

ヘルスケアに関するコラム

2024年6月27日

心房細動と認知症は関係している?危険な不整脈について解説

監修:循環器専門医師 磯谷善隆先生

 

心房細動は、心臓の不整脈の一種であり、年齢を重ねるごとに増える病気です。

一方、認知症は記憶や判断力などの認知機能の低下を特徴とする病気で、こちらも高齢者に多く見られます。

これら二つの病気はそれぞれ独立して発症することが多いですが、近年の研究により、心房細動と認知症の間には密接な関係があることが示されています。

 

 

 

心臓は、電気信号によって規則正しいリズムで動き、全身に血液を送り出しています。しかし、何らかの理由でこの電気信号が乱れてしまうと、心臓の拍動が不規則になる「不整脈」が起こります。

 

不整脈のうち、心房が不規則に震える状態を「心房細動」といいます。心房細動は加齢とともに増える病気で、2020年での患者数は100万人と言われていますが、高齢化に伴いさらに増えることが予測されます。

 

心房細動では動悸や息切れ、疲れやすさなどの症状が現れることがありますが、自覚症状がない人も多くいます。軽い息切れを感じても放置しているうちに体が慣れて、症状を感じにくくなることがあります。そのため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。

 

 

心房細動そのものは、ただちに命に関わる病気ではありません。心房細動が怖い理由は、心原性の脳梗塞を起こしやすいからです。

 

心房細動が起こると心臓が正常に血液を送り出すことができず、血液が心房内でよどみ、血栓ができやすくなります。できた血栓が血流に乗って脳の血管を塞ぐと、脳梗塞が起こります。

 

心臓でできた血栓が原因で起こる脳梗塞を「心原性脳塞栓症」と言い、命に関わることが多く、一命を取り留めても麻痺や寝たきりなどの後遺症が残ることがあります。

 

 

心房細動が認知機能低下や血管性認知症の原因となりうることが最近、注目されています。

 

実は心房細動が起こると脳内の小さな血管が詰まる無症候性の脳梗塞が起こることがあります。この無症候性の脳梗塞は、「隠れ脳梗塞」と呼ばれていて、この「隠れ脳梗塞」により脳の血流が悪くなり、認知機能が低下すると考えられています。

 

心房細動がある人はない人に比べ認知症に1.4倍なりやすいという報告もあるため、心房細動の早期発見および治療は、認知症予防の観点からも非常に重要です。

 

 

 

心房細動の原因は多岐にわたります。

高血圧や心疾患を持っている人は、心臓に負担がかかりやすいため心房細動になりやすいと言えます。

また、肥満、飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣の乱れも、心房細動を引き起こすことがあります。

 

心房細動を予防するため、バランスの取れた食事やじゅうぶんな睡眠など、規則正しい生活を心がけましょう。

 

 

心房細動は自覚症状がないことも多いので、早期発見が難しいのが問題です。

そのため、息切れや動悸などの軽い症状を見過ごさないことが重要です。また、脈は自分で測ることができるので、定期的に測ってみましょう。

最近はスマートウォッチなどでも脈を測れるので、そういったものを活用するのもいいでしょう。

 

違和感を感じたら、放置せず早めに医療機関を受診するようにしましょう。