夏の運動で熱中症を防ぐには?カギは心拍数!年齢別計算式による適正目安と測定方法を解説

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ヘルスケアに関するコラム

2025年7月10日

夏の運動で熱中症を防ぐには?カギは心拍数!年齢別計算式による適正目安と測定方法を解説

監修:循環器専門医師 磯谷善隆先生

 

 

適度な運動は、健康を維持するために非常に重要です。しかし、気温が高くなると熱中症のリスクも高くなります。熱中症は体温調節機能がうまく働かなくなる状態で、体内に熱がこもって体温が上昇することで生じる健康障害の総称です。重篤な場合は命に関わることもあります。

近年は気温が上がって猛暑が続いており、環境省からは毎日のように熱中症警戒アラートが発表されています。

本記事では、夏に熱中症を避けながら運動に取り組む方法について詳しく解説します。

 

熱中症とは

 

まずは熱中症の基本について知っておきましょう。

 

(1)熱中症の定義と症状

 

熱中症は、高温多湿な環境で体温が過度に上昇し、体温調節機能が破綻し、体内に熱がこもった状態を指します。以下のような症状が現れることがあります。

 

  • ・頭痛
  • ・めまい
  • ・吐き気
  • ・けいれん
  • ・意識障害

 

(2)熱中症の原因

 

熱中症の主な原因は、高温多湿な環境での運動や作業です。特に、体内の水分や塩分が不足すると、体温調節がうまくいかなくなります。また、高齢者や乳幼児、体調が良くない人などは体温調整がうまくできず、熱中症になりやすいため注意が必要です。

 

熱中症予防のカギは心拍数管理|夏の運動で気をつけるべき目安とは?

 

夏でも適度な運動は心臓の健康を保つために重要です。しかし、過度な運動は逆効果となり、体に過剰な負担をかけることがあります。

 

 

(1)なぜ“夏”の運動には注意が必要か?

 

夏の高温環境下では、体温の上昇や脱水による血液粘度の増加、循環系への過剰な負荷が生じることで、心拍数が急激に上がり、熱中症や心筋への過負荷を引き起こすリスクが高まります。

 

厚生労働省の熱中症ガイドラインによれば、暑熱環境での運動中は以下のようなリスクが指摘されています。

 

・発汗による電解質バランスの崩れ(低ナトリウム血症)

・血液循環の悪化による熱放散障害

・熱中症による意識障害や心停止のリスク

 

このように、「運動が体に良い」=「夏でもたくさん動くべき」ではなく、季節や環境に合わせた“適切な強度と時間”が何より重要です。

 

(2)ポイントは「心拍数」と「こまめな水分補給」

 

特に夏場は、心拍数の自己管理が運動の安全性を高める鍵となります。最大心拍数の60〜70%に抑えることを目安に、無理のない範囲で行動し、水分と塩分補給を適切に行うことで、心臓への負荷を最小限に抑えることができます。

 

心拍数と運動強度の関係

 

運動中に心拍数をしっかり管理することは、運動の強さを調整するだけでなく、熱中症を防ぐためにもとても大切です。
特に暑い季節は、心拍数の上昇が体への負担となるため、こまめなチェックが重要です。

 

(1)心拍数でわかる運動のきつさ

 

運動をすると、自然と心拍数が上がります。この心拍数の変化をチェックすることで、「どれくらい体に負荷がかかっているか(=運動強度)」を知ることができます。

 

(2)自分にとって最適な心拍数とは

 

「どれくらいの心拍数が自分にとってちょうどいいのか」は、運動の目的や体力レベル、年齢、健康状態によって異なります。

 

一般的には、「最大心拍数の60~70%の範囲」が、有酸素運動として効果的かつ安全な心拍ゾーンとされています。
この範囲での運動は、脂肪燃焼や心肺機能の向上を目指す場合に適しており、心臓や血管への過度な負担を避けながら、健康維持やダイエット効果も期待できます。

 

しかし、個人が自分に合った運動をするには、“最大心拍数の何%くらいまで上がっているか”をひとつの目安にすると、無理のない範囲で効果的に体を動かすことができます。

 

年齢からわかる「最大心拍数」の計算方法

 

「自分に合った運動強度って?」と感じたら、まずは“最大心拍数”を知ることから始めましょう。
まずは、年齢をもとにした簡単な計算式で、自分にとって無理のない心拍数の目安がわかります。

 

(1)最大心拍数の基本計算式

 

年齢をもとに最大心拍数は次の式で求められます。

 

220 − 年齢 = 最大心拍数

 

例:40歳の場合

 

220 − 40 = 180(最大心拍数)

 

(2)適正な心拍数の目安

 

有酸素運動などの効果を引き出すには、最大心拍数の**60〜70%**の範囲が適切とされています。

 

例:最大心拍数180の場合

 

180 × 0.6〜0.7 = 108〜126

つまり、心拍数を108〜126の範囲に保つと効果的です。

 

 

心拍数を測定する方法

 

では、どのように心拍数を測定したらいいのでしょうか?

 

(1) 心拍計で正確に測定する

 

心拍計は、胸に装着するタイプや腕に巻くタイプがあり、医療現場やスポーツトレーニングでも活用される高精度な測定機器です。

 

特に胸ベルト式の心拍計は、心電図と同じ方式で心拍数を検出するため、正確性が非常に高いのが特徴です。
本格的な運動管理をしたい方、ランニングやサイクリングなどで詳細なデータを記録したい方に向いています。

 

(2) スマートウォッチで手軽にチェック

 

スマートウォッチは、日常的に心拍数を測定したい人におすすめのアイテムです。
手首に装着するだけで、光学式センサーでリアルタイムに心拍数を表示してくれます。

 

最近では、運動時の心拍数だけでなく、睡眠中やストレス状態の管理ができるモデルも多く、健康意識の高いユーザーから支持されています。

 

軽量でデザイン性にも優れているため、普段使いしやすいのがメリットです。

 

このように現在では、手軽に使えるウェアラブルデバイスが多く販売されています。
スポーツ用モデルや日常生活にも適したタイプなど、自分に合ったものを選びましょう。

 

熱中症を避けるための具体的な方法

 

 

(1)水分補給

 

運動中はこまめに水分を補給することが重要です。軽い脱水症状では喉の乾きに気づかないこともあるため、喉が乾いていなくても、こまめに水分をとりましょう。

水分補給については、以下のポイントに注意してください。

  • ・運動前、運動中、運動後に水分を摂取する
  • ・スポーツドリンクを利用する
  • ・利尿作用があるアルコールやカフェインの摂取を控える

 

(2)適切な服装

 

夏の運動には、通気性の良い軽装が適しています。以下の点に注意して服装を選びましょう。

  • ・吸湿速乾性のある素材を選ぶ
  • ・帽子やサングラスを着用する
  • ・熱を吸収しやすい黒い服ではなく、白や明るい色の服を選ぶ

 

(3)運動時間や場所の調整

 

運動する時間帯や場所も熱中症を避けるために重要です。外で行う場合は、以下のことに注意してください。

  • ・午前10時から午後4時くらいまでの、最も暑い時間を避ける
  • ・直射日光を避ける
  • ・日陰や風通しの良い場所を選ぶ

また、適度な休憩を取ることも重要です。定期的に涼しい場所で休憩をとり、水分補給を行いましょう。

 

熱中症の初期症状に気づく方法

 

 

熱中症は予防も大切ですが、初期症状に気づいて適切に対応することが重要です。

以下のポイントに気をつけて、体調変化を見過ごさないようにしましょう。

 

(1)心拍数の変化

心拍数が急激に上昇したり、不規則になったりする場合は、熱中症の初期症状の一つと考えられます。運動中に心拍数を常にチェックし、異常があればすぐに休むことが重要です。

 

(2)体温の上昇

体温が異常に上昇することも熱中症のサインです。運動中に体が異常に熱く感じる場合は、すぐに運動を中止し、涼しい場所で休むようにしてください。

 

(3)その他の初期症状

以下のような症状が現れた場合も、熱中症の初期症状と考えられます。

  • ・異常な発汗
  • ・唇がしびれる
  • ・息切れ、呼吸が苦しい、過呼吸

運動中、おかしいと感じたら無理をせず休むようにしましょう。

自力で動ける場合は、涼しい場所に移動して水分を補給し、水や濡れタオルなどで体を冷やしてください。

 

まとめ:夏の運動は、心拍数チェックと熱中症リスク対策が必須!

 

夏に運動をする際は、熱中症のリスクを避けるために適切な対策が必要です。

水分補給や適切な服装、運動時間の調整を行うことで、熱中症を予防することができます。心拍数の変化や体温の上昇など、初期症状に早めに気づくことも大切です。

これらのポイントを押さえて、安全に夏の運動を楽しみましょう。