Column
ヘルスケアに関するコラム
2025年10月17日
山崎まさよしさん発症の不整脈とは?誰にでも起こりうる危ない「ドキドキ」を見過ごさないために
2025年10月15日、山崎まさよしさんが「不整脈」で全国ツアー全15公演を中止を発表しました。
これをきっかけに、テレビなどでも「不整脈」について改めて取り上げられており、誰にでも起こる身近な疾患であることや「脳梗塞」のリスクがあることなどから一般の方の意識が高まっているようです。
本記事では不整脈について要点をピックアップしてご紹介します。主な種類と自覚症状、なりやすい人、受診の目安などを簡潔に解説していますので最低限知っておくべき基礎知識としてお役立てください。
山崎まさよしさん、不整脈のためツアー全15公演を中止
シンガー・ソングライターの山崎まさよしさん(53)が、11月8日から予定していた「YAMAZAKI MASAYOSHI 30th Anniversary TOUR 2025–2026 “僕はここにいる”」の全公演中止を公式サイトで発表しました。理由は「不整脈の症状により長時間のライブ演奏が困難」と説明されています。公演は2026年2月28日・パシフィコ横浜まで計15公演が組まれていました。
【#山崎まさよし】
「YAMAZAKI MASAYOSHI 30th Anniversary TOUR 2025-2026 “僕はここにいる”」
開催中止のお知らせhttps://t.co/TLfpmXjryJ— オフィスオーガスタ (@officeaugusta) October 15, 2025
体調最優先の英断。ファンとしては寂しいですが、無理をしない選択が回復への近道。なぜなら、不整脈はタイプや重篤度が幅広く、「すぐ治療が必要なケース」もあれば「経過観察が中心のケース」もあります。
「不整脈」とは?実は誰にでも起こりうる—突然の“ドキドキ”に気づいたら
心臓は電気信号で動いていますが、その電気の流れが乱れると心臓の鼓動(脈)のリズムも乱れます。不整脈は、そのリズムが乱れる状態の総称です。
速くなる(頻脈)、遅くなる(徐脈)、ときどき“脈が飛ぶ”(期外収縮)の症状をはじめ、「ドキドキ」「ズキン」「スッと抜ける」―など感じ方は人それぞれ。
緊張・長時間の集中・睡眠不足・刺激物の摂りすぎなどで症状が出やすくなることもあります。
そして、すべてが危険というわけではありません。重要なのは、放置してよいタイプとすぐ受診が必要なタイプがあるということ。重要なのは、その見分け方です。
不整脈の主な種類は3タイプ(速い・遅い・とぶ)
不整脈は大きく3タイプで考えるとわかりやすいです。
①頻脈性(脈が速すぎる)
→上室性不整脈:心房細動/心房粗動/発作性上室性頻拍など。
心房細動や心房粗動は心房の中で血栓ができやすくなり脳梗塞のリスクが高まるため、放置しないことが大切です。
脳梗塞は一度で死に至ることもあり、命を取り留めても寝たきりなどの後遺症が残る可能性が高くなります。
②徐脈性(脈が遅すぎる)
→徐脈性不整脈:洞結節や刺激伝導系の異常で毎分60回未満になるタイプ。
めまい・ふらつき・息切れがヒントになります。原因として、心臓が正しく動かなくなることが挙げられます。脈が毎分50回以下が続く場合や、失神を繰り返す場合は、循環器内科を受診しましょう。
③期外収縮(ときどき脈が“飛ぶ”“抜ける”感じ)※最も多い
→心室性不整脈:心室期外収縮、心室頻拍、心室細動など。
もっともよくあるタイプ。一瞬ドキッとする感じが特徴。多くは良性ですが、頻発する・症状が強い・不安が続く場合は受診が必要に。なかでも心室頻拍・心室細動は命に関わる不整脈で、心筋梗塞や心不全、遺伝性疾患などが原因で起こることが多く、突然死の原因にもなります。
不整脈は「速い・遅い・とぶ」で見分け方と対応が変わります。次に紹介する強い症状がすでにある場合は迷わず救急へ。そうでなくても「繰り返す・生活に支障・リスク因子あり」なら早めに循環器内科を検討してください。また、少しでも心当たりがある方は、検脈と生活リズムの見直し、そして定期的な検査やチェックなどを取り入れ、リスクの早期発見を心がけましょう。
一番危ない不整脈については以下の記事でご紹介しています。心室細動は命に関わる不整脈です。気になる方は合わせてお読みください。
一番危ない不整脈は?結論は心室細動!今すぐ受診の目安・症状・治療を循環器医師が解説
不整脈でこんな症状がある方はすぐ受診を
次のような症状がある方は早めの受診、場合によっては至急受診を検討してください。
・意識を失った/失いかけた、強いめまいが続く
・冷や汗・胸痛・吐き気を伴う動悸
・安静にしていても息苦しい・動悸が何度も起きる
不整脈で息苦しさを感じている方は、以下の記事も参考にしてみてください。
【医師が解説】不整脈で息苦しいのは危険?見逃せない症状とタイプ別リスク!心房細動・心室性期外収縮もチェック
不整脈になりやすい人の傾向
では、不整脈になりやすい人はどのようなタイプの人なのか?
まず年齢を重ねると、不整脈が起こる頻度は上がっていきます。
若い頃はなにも問題がなかった人にも現れることがあるため、健康診断は欠かさないようにしましょう。
加えて、糖尿病・高血圧・高尿酸血症・肥満などの生活習慣病や、喫煙・多量飲酒・睡眠不足といった習慣が心臓への負担を増やします。心筋梗塞や心不全、先天性心疾患の手術歴など他の心疾患がある場合も生じやすく、家族に原因不明の突然死がある方も遺伝性不整脈の可能性に注意が必要です。さらに、複数の薬を併用していると相互作用で脈に影響が出ることがあります。
40歳を過ぎたら高まる不整脈リスク
高精度なデバイスで不整脈を検出する心電図サービスを提供するココロミルの検査データによると、心疾患リスクは、上記のように加齢とともに検出率が増加しています。
40代では33.3 %、50代では48.4 %、60代以降は76.6 %にもなります。
不整脈は、健診だけでは見逃されることがある?
さて、グラフの青いグラフは、定期健康診断での不整脈検出率です。赤いグラフとの差はなんなのか?
実は、一般的な健診の安静時心電図は30秒ほどの短時間のため、“その瞬間”に不整脈が出ていなければ記録されないことがあります。
逆に、8時間~24時間の長時間の心電図記録(ホルター心電図等)であれば、「時々出る不整脈や違和感」も見逃さずキャッチすることができます。
赤いグラフは在宅型の長時間ホルター心電計「ホーム心臓ドック®」で検出された不整脈の割合。40代から差が出始め、山崎まさよしさんも該当する50代では40%の差が見られます。
不整脈の中には、心臓突然死の原因に繋がるものもあります。
心臓由来のトラブルは、がんのように時間をかけて進行する病気と違い、発症してすぐに命に関わったり、助かっても重い後遺症が残ることがある――この“急変の怖さ”が特徴です。
そして、不整脈、心筋梗塞、心不全などさまざまな心臓の病気を含む「心疾患」は、日本人の死因第2位なのです。(高血圧性を除く)
忙しい現代人に在宅型の長時間心電図記録という選択肢
ココロミルの在宅型心電図サービス(ホーム心臓ドック®/pro)なら、超小型の心電計を胸に貼るだけで、日常生活や睡眠中に脈の状態を長時間連続記録できます。
記録後は、すみやかに専門家が解析。オンラインクリニックも完備しており、異常が見つかれば通院の手間なく診察が受けられます。必要に応じて大学病院への紹介状もお渡し可能。
40歳を過ぎたら、一度「長時間心電図」でご自身の不整脈や心臓の状態をチェックしてみることをおすすめします。
医師監修(監修:循環器専門医師 磯谷善隆先生)のサクッと読める「不整脈について」は以下の記事もご参考ください。
山崎さんのニュースから、私たちができること
山崎まさよしさんのニュースから、私たちがまず大切にしたいのは「無理をしない」ことです。
長時間の作業や強い緊張が続く日は、意識して休息と水分をとりましょう。毎日1分だけ、手首や首で脈を感じる“セルフチェック”も習慣に。リズムが不規則だったり“抜ける”感じがあれば、そのときの様子をメモに残します。出るタイミング、どのくらい続いたか、運動後や就寝時などの状況を記録しておくと、診療の場で確かな手がかりになります。症状が長引く、強い、心配が続く――そんなときはためらわず専門医へ。もし「時々だけ」現れる違和感なら、長時間の心電図記録という選択肢も主治医と相談してください。
音楽を愛し、舞台を大切にしてきた山崎さんへの敬意を込めて、私たちも自分の体の声に耳を澄まし、早めの気づきとやさしいセルフケアを重ねていきましょう。
本記事は循環器専門医師 磯谷善隆先生による医師監修の記事を再編集して作成